10年越しの笑い話
10年前に一緒に働いたやつの送別会。
10年前はすでに俺は課長だった。
そいつは制作に異動してきた新人。
10年前はまだまだうちもブラックでさ、
一緒に何日も徹夜した。
夜中に一緒にラーメン食べてさ。
戻ってまた仕事してさ。
会議室で一緒に昼寝したこともあったよな。
お互いもう気持ちが崩壊して喧嘩したりね。
何度もクライアントに怒られてさ、
慰め合って、励まし合って。
限界を超えながら、お互いが運命共同体。
あの頃はまだ管理職として俺は未熟でさ、
スマートなやり方ができなかった。
俺にできるのは一緒に汗流すことだけだった。
真夜中のラーメン屋で夢を語り合った日々。
そいつとは1年だけだったんだ。
その後急成長していく様子を俺は
嬉しく思っていたんだ。
でも俺のこと恨んでるかなって
ずっと不安もあったんだ。
送別会でさ、不思議だよな~。
その地獄の日々が全部笑い話になるんだ。
人生って不思議だよな。
あの日々が今では最高の思い出になる。
「12年この会社で働いて、
ユウさんとのあの一年が一番地獄でした。
あれがあったから頑張れました。」
そう泣いて笑って話せる今夜は最高だね。
俺は最後に言ったんだよ。
「会社を去るお前に言っていいか分からないけど…。」
「…」
「…」
「またいつか一緒に仕事がしてぇ」
そしたらそいつがさ、
「時給800円で働きますよ」
って返しがまた最高だったよ。
地獄のように感じた日々が
10年越しに笑い話になる。
地獄のように感じた日々が
後の自分を支えてくれる。
地獄のように感じた日々が
10年越しに救われることがある。
つらいことがあるから、
嬉しいことにちゃんと嬉しいって気が付ける。
悲しいことがあるから、
笑えることが大切だって気が付ける。
つらいことがあっても乗り越えられるのは、
いつか笑い話にできることを知っているから。
一緒に笑える仲間がいるから。
苦労上等よ。失敗上等よ。
いつか全部笑い話にしてみせるからな!
今日はいい夢が見れそうだな。
【ユウ】