ユウ、ヒロ、ナツの戯言

男3人による戯言、雑記、日誌を散文的に

想い出逃避行~童貞挽歌❷~

童貞とは童貞という名の生物である。

 

詳しくは書けないが、

昔、童貞だけが通える男子高校があった。

「脱・童貞は則・退学」という校則がある。

生活指導教員ならぬ、性指導教員が

厳しく監視する高校。

 

教員「セッ〇スの意義とは?」

生徒「子供を作るためであります!」

教員「では子どもを作らないお前たちは?」

生徒「セッ〇スは不必要です!」

 

こんな号令が毎朝行われていた。

 

 

ある日の会話

おれ「明日彼女がうちに泊まりに来んだよ」

ヒロ「正気か?」

おれ「高校辞めるかも」

ヒロ「馬鹿言うなよ!」

 

今思えばだが、

これは、親友が高校を退学になることを

心配したのではない。

俺が童貞を捨てることを許せなかった

のではないか?

そんな風に思うのだ。

 

ヒロは、俺にAVを渡し、

「これで邪念を払っとけ!」

そう伝えたのだった。

 

それから数か月後…。

まさかとは思ったんだ。

クラス内で誠しやかに流れた

噂を聞いた時は…。

 

「ヒロは、童貞じゃないらしいよ」

 

そんなわけない。

だいたいあいつは彼女もいない。

演劇とドラムに明け暮れる日々を過ごしている。

 

しかし、その年の文化祭。

男しか存在しない我らが学び舎に

女子高生が数多く来訪する年に一度のイベント。

 

しかし、参加意識の低い俺たちはどこか冷めていた。

教室の隅で、俺はギターを弾いていた。

そこに、クラスメートが声を掛けてきた。

 

「ヒロの彼女っぽいんだけど、

ヒロはどこにいるか?って聞かれたんだけど」

 

扉の方見ると、可愛らしい女子高生がいた。

 

俺は、その質問には答えずに

教室を飛び出し、屋上に向かった。

 

屋上の扉を開けると、

そこにヒロが立っていた。

煙草をくわえながら、賑わう校庭を眺めている。

 

おれ「ヒロ、彼女が来てるって」

ヒロ「…」

おれ「彼女じゃないよな?友達かなんかか?」

ヒロ「…」

おれ「答えろよ!」

ヒロ「俺たちのバンド名、〈童帝〉って

   付けたの俺だよな」

おれ「そうだよ。一緒に音楽やって、

   卒業式も一緒だって、そういう意味で…

   いや、そんなことはどうでもいい!」

ヒロは、俺に肩をポンと叩き、こう言った。

ヒロ「永遠なんてものはないよな」

そういうと、扉の方に歩いていく。

その後ろ姿におれは叫んだんだ。

おれ「お前、まだ童貞だよな!?

   童帝続けるよな!?」

ヒロはそのまま扉の奥に消えていった。

 

それから俺はヒロと話をしていない。

一緒に卒業はしたのだったのだが…。

 

あの時ヒロは校則違反をしたのか?

それは今でも知らない。

今では酒を酌み交わす仲だが、

俺はいまだにこのことを引きづっている。

 

いつか聞いてみることがあるのだろうか?

 

「ヒロ、お前、童貞捨てたのいつ?」

 

【ユウ】