ユウ、ヒロ、ナツの戯言

男3人による戯言、雑記、日誌を散文的に

想い出逃避行~童貞挽歌①~

今も思い出す。

童貞だったあの日々を。

 

童貞とは、童貞という名の生き物である。

童貞か否かは、生物としての分類が異なる。

ちなみに、

童貞とは15歳以上、29歳以下を指す言葉である。

 

ちなみに童貞を見分けるのは簡単だ。

薬指がひとさし指よりも短いひとは童貞。

30代以上の童貞のことを妖精と呼ぶ。

非常に稀な存在で、

処女ではない女性には

彼らのことのことを認識できない。

大人の女性は妖精を観測することができない。

このことはあまり知られていない。

もしも、あなたが大人の女性で、

妖精を観たというならば、

それは一時的に時空が歪められたに過ぎない。

妖精を観た大人の女性は不幸になるという。

注意されたし。

 

 

あの頃、エロを入手するのは今よりも困難だった。

エロ本を買う、AVをレンタルできるのは18歳以上。

netで気軽にエロとコンタクトできる時代ではないのだ。

 

そもそも18歳以上というルールがおかしい。

切実にエロを求めるのは、それ以下の時だ。

この国は、性の教育の本質を理解していない。

まったく困ったもんだ。

 

当時、AVの入手経路は2つだ。

一つは、年齢制限にゆるい店でレンタル。

もうひとつは、友人から借りるだ。

 

 

 

 

私はリスクを承知で

レンタル屋に突入するも、

18歳未満ということで貸出を

拒否されたことがある。

まだ、童貞に対して差別が残っていた時代。

俺たちは隠れるように生きていた。

童貞とバレたら最後、命が危ない。

 

童貞だけの秘密結社を作り、

童貞だけの世界を生きていた。

 

そんな頃、

童貞界にひとりの救世主が現れた。

林君である。

 

その老け顔を武器に18歳の壁を突破し、

AV借り放題という

特権階級入りを果たしていた。

 

それだけじゃない!

彼は、自宅の自室にビデオレコーダーと

8mmビデオカメラを完備していたのだ!

 

これがどういうことか分かだろうか?

つまり彼は、そうだ。

「ダビング」ができるということ。

 

彼は、

自身のオリジナルAVオムニバスを

作りあげていた。

何というクリエイティブなやつなんだ!

 

AV鑑賞者はまずふたつのタイプに分類される。

ストーリー重視派と抜きどころ重視派だ。

 

彼は、抜きどころ重視派だ。

なので、彼の編纂するオムニバスは、

ストーリーはおろか、前戯は全てカット。

セッ〇スシーンオンリーで構成される。

 

これを作るのにどれほどの労力が必要かを

想像できるだろうか?

デジタル映像ではない、アナログの時代だ。

お気に入りのシーンを見つけては、

8mmにダビングをし、

それをまた、VHSにダビングし直す。

60分に渡るオムニバスを作成するのには、

恐らく、AV10本程度は必要だっただろう。

 

彼は、黙々と努力ができるタイプだ。

エロを追求する求道者でもあった。

 

彼のオムニバスには2つの弱点がある。

 

ひとつは、完全に彼の趣味で構成されることだ。

AVは、先ほどの派閥のほか、非常に好みは細分化される。

彼と趣味が合わないことには目を潰らなければならない。

 

もうひとつは、画質が相当劣化していることだ。

VHS⇒8㎜⇒VHSというダビングが必要で

更に当時は、新品でも今よりだいぶ画質が落ちる。

 

それでも彼の特殊能力は、重宝した。

彼が新作をリリースするたびに、

童貞たちが彼の家に集った。

 

彼の部屋は童貞の秘密基地。

 

そんな彼が今でも妖精であることは、

俺たちだけの秘密だ。

 

懐かしき童貞の日々よ。

もう戻れない輝かしい日々よ。

 

【ユウ】